中央社会保険医療協議会 総会 議事録

 中央社会保険医療協議会 総会(第553回)議事次第より抜粋 令和5年8月30日(水) 

 

 在宅歯科医療について 

【現状と課題】 

(在宅歯科医療を取り巻く状況) 

○ 医療サービスを実施する歯科診療所の割合は増加しており、令和2年では 22.8%である。 

○ 歯科訪問診療の訪問先としては、自宅が最も多く、次いで居住系高齢者施設、介護保険施設となっている。 

○ 歯科訪問診療を受ける患者の多くは高齢者であり、85~89 歳で最も多く実施されている。 

○ また、脳血管障害や認知症などの疾患を有する者が多く、歯科訪問診療を受けたきっかけとしては、「自院に通院歴のある患者・家族等からの依頼」が最も多い。 

(歯科訪問診療の実施状況等) 

○ 在宅歯科医療を推進する観点から、歯科訪問診療料の評価や在宅療養支援歯科診療所の施設基準の見直しなどを行っている。 

○ 歯科訪問診療料の算定回数は、令和2年に減少したものの増加傾向にあり、歯科訪問診療2が最も多く算定されている。 

○ 在宅療養支援歯科診療所の施設数は、令和元年まで増加していたが令和2年に減少し、以降はほぼ横ばいで推移。 

○ 「在宅療養支援歯科診療所1,2」の届出を行っていない理由としては、無回答を除くと、「過去1年間に歯科訪問診療1及び歯科訪問診療2を4回以上算定していないため」が最も多い。 

○ 訪問歯科衛生指導料の算定回数は、令和2年を除き近年ほぼ横ばいとなっている。年齢階級別でみると、訪問歯科衛生指導料1~3のいずれも 85~89 歳で最も多く実施されている。 

○ 歯科疾患在宅療養管理料の算定回数は令和2年で減少しているが、経年的には増加傾向にあり、内訳をみると在宅療養支援歯科診療所1による算定回数が増加傾向にある。 

○ 歯科訪問診療料を算定した患者における、口腔機能の評価に基づく継続的な歯科疾患の管理について評価の充実を行ってきており、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料及び小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の算定回数は増加傾向にある。 

○ 栄養サポートチーム等と連携した場合の評価である栄養サポートチーム等連携加算の算定は増加しているものの、連携は一部にとどまる。 

○ 小児に対する歯科訪問診療は、全体としては少ないが、算定回数は増加している。 

○ 歯科訪問診療の実施にあたり、医科医療機関(病院、診療所)や保険薬局、介護保険施設等との連携が求められるが、関連する診療報酬項目の算定は少なく連携は一部にとどまる。 

【論点】 

○ 年齢や疾患等の患者の状態や口腔の状態、療養する場所等に応じた在宅歯科医療を推進する観点から、歯科訪問診療に係る歯科診療報酬上の評価について、どのように考えるか。 

【主な意見】 

○ 歯科訪問診療はニーズがあるものの、実施している歯科医療機関は全体の約2割程度にとどまっているため、各地域における在宅歯科医療の提供体制の構築をさらに推進する必要がある。 

○ 病院歯科による歯科訪問診療の実施状況は地域差が大きい。病院歯科と歯科診療所の連携は非常に重要であることから、病院と歯科診療所のそれぞれの機能に応じた評価について検討すべき。 

○ 在宅療養支援歯科診療所について、さらに機能分化・連携が進むよう、機能に応じて適切な評価を検討すべき。 

○ 訪問歯科衛生指導について、施設等で実施される日常の口腔衛生管理と、医療として実施される訪問歯科衛

生指導では役割が異なるため、要介護者等の口腔健康管理がさらに推進されるよう検討すべき。 

○ 人生の最終段階においては、口腔乾燥などから生じる疼痛・不快感などで頻回の介入が必要になるケースもあることから、適切な介入が可能となるよう検討すべき。 

○ 小児への歯科訪問診療について、医療的ケア児の増加などに伴い今後さらにニーズが増すと考えられることから、推進する必要がある。 

○ 歯科訪問診療は歯科医療機関により提供されるため、関係者間の情報連携は非常に重要であるが、連携が進んでいない現状があることから、その理由や課題について分析するべき。また、栄養サポートチームについては、実施状況が一部にとどまることから、連携して実施できる体制を構築していく必要がある。 

○ 歯科訪問診療を実施していない理由として「依頼がない」という回答が上位にある一方で、介護保険施設では歯科の受診経験なしが約 30%となっている。歯科訪問診療が推進されるよう、ニーズのマッチングを進めるべき。 

     

7)歯科について 

【現状と課題】 

(歯科医療提供体制(かかりつけ歯科医機能・病院における歯科の機能等)) 

○ ライフステージに応じた継続的な口腔の管理や医療安全の取組、連携に係る取組に積極的に取り組む歯科医療機関として、平成28年度診療報酬改定においてかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所を新設し、以降施設基準の見直し等が行われおり、施設基準の届出医療機関数は年々増加している。 

○ かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準には歯科疾患の重症化予防や歯科訪問診療に関する実績要件等が必須とされており、小児の歯科治療に関する要件は設定されていない。 

○ 地域歯科診療支援病院歯科初診料の届出医療機関数は増加している。 

○ 入院患者に対して、急性期、回復期及び慢性期のそれぞれに応じた歯科医療が提供されることが求められる。(医科歯科連携をはじめとした多職種連携、介護との連携) 

○ がん等の周術期等における口腔機能管理を評価した周術期等口腔機能管理は、平成 24 年度診療報酬改定において新設されて以降、対象患者の見直し等が行われてきた。 

○ 医科歯科連携を推進する観点から、歯科診療を行う上で必要な診療情報や処方内容等の診療情報について、医科の保険医療機関と歯科の保険医療機関の間で情報共有することにより、診療情報連携共有料において評価しているが算定状況は低調である。 

○ 介護保険施設等と協力歯科医療機関の連携内容は歯科訪問診療が多いが、一方で施設が実施してもらいたい内容は研修会や摂食嚥下に関する内容が多い。かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所では、「施設職員への口腔に関する技術的助言や研修等の実施」をしている割合が大きい。(院内感染防止対策) 

○ 平成 30 年度以降、院内感染防止対策を推進する観点から、歯科初診料及び歯科再診料に係る評価の見直しが行われてきた。 

○ 歯科初・再診料の院内感染防止対策に係る加算の施設基準の届出医療機関数は令和4年時点で 65,295 施設である。 

○ 歯科の外来診療の特性を踏まえ、歯科外来診療の環境の整備を図る取組を評価した歯科外来診療環境体制加算の施設基準の届出医療機関数は令和4年時点で33,593 施設である。(歯科疾患の重症化予防・ライフコースに応じた口腔機能の管理、歯科固有の技術) 

○ 歯科疾患の重症化予防を推進する観点から、令和4年度診療報酬改定においては、フッ化物歯面塗布処置の対象患者を見直すとともに、歯周病の管理について歯周病安定期治療を更に推進するため、従来の歯周病安定期治療(Ⅰ)と歯周病安定期治療(Ⅱ)を整理・統合した。 

     

○ 小児及び高齢者に対する口腔機能管理については、令和4年度診療報酬改定において対象患者の見直しを行ったが、算定状況は低調である。 

○ 歯科衛生士による実地指導を評価した歯科衛生実地指導料は、平成8年に新設されて以降、平成 22 年の障害者に対する実地指導の評価新設を除き、大きな見直しは行われていない。 

○ 歯科固有の技術について、これまでの診療報酬改定において、口腔疾患の重症化予防や口腔機能低下、生活の質に配慮した歯科医療を推進する観点から新規技術の導入を行っている。 

○ 歯科用貴金属以外の歯冠修復材料について保険適用が進んでおり、歯冠修復の算定回数について小臼歯は令和4年に CAD/CAM 冠が全部金属冠を上回ったが、大臼歯の歯冠修復に占める CAD/CAM 冠の割合は約 16%である。(障害者・有病者・認知症の人への歯科医療) 

○ 歯科診療を行う上で特別な対応を必要とする患者に対しては、診療内容に関する評価と連携に関する評価が行われており、令和4年度診療報酬改定においては、歯科診療特別対応連携加算の施設基準の見直しが行われた。 

○ 障害児の摂食や口腔ケアにはリスクを伴うことから、個々の状態に応じた配慮が必要である。摂食嚥下障害を有する障害児について、当該患者が通学する学校等に対し、歯科医療機関から口腔内の状態や摂食嚥下等について学校生活を送るにあたり必要な情報の提供を行うケースがある。 

○ 認知症が重度になると口腔清掃が自立困難になる者の割合が大きくなる一

○ 認知症が重度になると口腔清掃が自立困難になる者の割合が大きくなる一方で、口腔ケアの介助を拒否する者の割合も大きくなる。また、認知症患者に対して歯科治療ができない場合、近くの病院歯科等に紹介する歯科医療機関の割合が大きい。(電話や情報通信機器を用いた歯科診療) 

○ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、電話や情報通信機器を用いた歯科診療については臨時的・特例的取扱いを実施し、初診を含めて実施を可能とする等の対応を行っている。 

○ 令和4年度診療報酬改定において、歯科衛生士等による訪問歯科衛生指導の実施時に、歯科医師が情報通信機器を用いて状態を観察した患者に対して、歯科訪問診療を実施し当該観察の内容を診療に活用した場合の評価を新設した。 

   

【論点】 

○ かかりつけ歯科医に求められる機能や病院における歯科医療など、歯科医療機関の機能・役割に応じた評価について、どのように考えるか。 

○ 医科歯科連携やリハビリテーション・栄養・口腔の連携、介護との連携など、関係者との連携をさらに推進する観点から、診療報酬のあり方についてどのように考えるか。 

○ 歯科外来診療における院内感染防止対策や患者にとってより安全で安心できる外来診療の環境の整備の評価について、どのように考えるか。 

○ 口腔疾患の重症化予防や年齢に応じた口腔機能管理をさらに推進するため、歯科衛生士による実地指導の評価も含め、診療報酬のあり方について、どのように考えるか。また、障害者等の歯科診療を行う上で配慮を要する患者に対する評価について、どのように考えるか。 

○ 新型コロナウイルス感染症の拡大時の臨時的な取扱いにおける実施状況等を踏まえ、電話や情報通信機器を用いた歯科診療の評価について、どのように考えるか。 

○ 生活の質に配慮した歯科医療の提供等を推進する観点から、歯科固有の技術の評価について、どのように考えるか。 

【主な意見】 

(かかりつけ歯科医や病院における歯科医療等、歯科医療機関の機能・役割について) 

○ ライフコースに応じた歯科疾患の重症化予防や地域包括ケアシステムにおける連携などが重要であり、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所にはこれらの役割が求められている。一方で、患者にとっては、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所とそれ以外の歯科診療所の違いが分かりにくいという指摘もあり、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所がどのような役割を担うべきか考える必要がある。 

   

○ 歯科医療機関の機能分化や連携を適切にすすめ、地域の状況に応じた歯科医療提供体制を構築するためにも、在宅歯科医療、医療安全や院内感染対策等、関連する施設基準を整理・検討すべき。 

○ 回復期病院や慢性期病院において、口腔と栄養の管理が一体的に行われることは、誤嚥性肺炎や低栄養の予防の観点から重要であり、地域の歯科診療所との連携も含め、リハ・口腔・栄養の一体的な取組を進めるべき。 

○ 歯科訪問診療を実施している患者に対して侵襲性の高い治療や専門性の高い歯科治療が必要となった場合、病院における歯科での全身管理下での治療が必要になることもある。病院歯科が、地域の歯科診療所の後方支援として歯科訪問診療や入院での歯科治療の受け入れ等、地域の状況に応じた役割を果たすことを推進するため、病院における歯科の機能についても適切に評価すべき。(医科歯科連携をはじめとした連携について) 

○ がん患者等への周術期等口腔機能管理は増加してきたが、周術期だけではなく、脳血管疾患等により入院が長期になる患者の口腔・栄養管理も重要。 

○ 医科との連携や介護との連携が進んでいない要因を丁寧に分析した上で、連携を進めるために必要な見直しを行うべき。 

○ 糖尿病における医科歯科連携や各種薬剤の副作用等に関する医歯薬連携も更に進めるべき。薬により口腔に影響があるものもあり、歯科治療を行う際に注意を要する医薬品などの情報連携は非常に有効である。歯薬連携の在り方について、現場での連携が進むよう検討すべき。(安心で安全な歯科医療について) 

○ 各種施設基準において、医療安全と感染対策に係る要件が位置づけられており、これらの感染対策を今後も継続することは重要。 

○ 医療安全と感染対策は歯科医療機関にとって当然のことであり、その上で、より充実した体制をどのように評価するのか、患者にも分かるように整理が必要。 

○ 新興感染症の流行時であっても継続した歯科医療提供体制を維持する観点から、歯科外来環境体制加算については、新興感染症に対する感染対策における考え方との整理も必要ではないか。(重症化予防や口腔機能管理、障害児者等の歯科診療について) 

○ 歯を喪失する一番の原因である歯周病やう蝕は、適切な管理を行うことで重症化予防が可能である。歯周病重症化予防治療や歯周病安定期治療について、より効果的な管理を推進するため、更なる整理・見直しをすべき。 

○ 歯科衛生士による歯科衛生実地指導は重症化予防の観点から非常に重要である。近年は、ブラッシング方法の指導等だけでなく口腔機能や生活習慣などの観点からも歯科保健指導が行われており、実態に応じた評価を検討すべき。 

○ 口腔機能の管理については、口腔機能管理の中で行われる口腔機能獲得や口腔機能向上のための訓練に対する評価について検討すべき。 

○ 小児を含めた障害児者や認知症の方への歯科医療も非常に重要であるが、治療には患者の状態に応じた配慮や時間、通常より多い人員体制を要することが多く、実態を踏まえた評価を検討すべき。 

○ 医療的ケア児等について、摂食嚥下等に関し学校等への情報連携をするケースがあることから、歯科医療機関と学校等との情報連携についても検討すべき。(電話や情報通信機器を用いた歯科診療について) 

○ 対面診療が基本ではあるが、新興感染症の感染拡大により外出が制限される状況下などでは、歯周病などの急性症状に対し、情報通信機器を用いて症状・状態を確認した上で必要に応じて投薬等を行うことは有効であり、情報通信機器を活用した歯科診療の評価も検討すべき。その他、口腔機能や摂食機能の評価、顎顔面領域の慢性疼痛の管理等、情報通信機器が活用できるものもあるのではないか。 

○ 口腔内の状態をどのように適切に把握するかも含め、効率的な口腔状態の確認や指導管理等、歯科領域における情報通信機器の活用について検討をすべきでないか。(生活の質に配慮した歯科医療について) 

○ 糖尿病や喫煙などの生活習慣は、歯周病など口腔疾患へ大きな影響を与えることが知られているので、これらに関する管理も重要である。 

○ 貴金属以外の材料の保険適用は進んで来ているが、適用部位が限られている等の現状もあることから、市場

価格に左右されない貴金属以外の材料の活用を積極的に検討するべき。 

その他の了解された事項 

令和6年度診療報酬改定施行時期の後ろ倒しについて 

○ 医療DXを推進するにあたり、診療報酬改定時に、医療機関等やベンダが、短期間で集中して個別にシステム改修やマスタメンテナンス等の作業に対応することで、人的、金銭的に非常に大きな間接コストが生じているとの指摘があったところ。令和5年6月に閣議決定された「医療DXの推進に関する工程表」においても、診療報酬改定の施行時期の後ろ倒しに関して、実施年度及び施行時期について、中医協の議論を踏まえて検討するとされていた。 

○ 中医協総会においては、令和5年4月および8月に議論を行い、令和6年度診療報酬改定より、薬価改定については令和6年4月1日に施行し、薬価改定以外の改定事項については、令和6年6月1日に施行することを事務局が提案し、了解された。